サイバーエージェントでUXディレクターを務める 大塚敏章 氏。13年間、事業立ち上げや運営を手がけてきた。これまでの経験から感じた課題や心がけてきたことを語った。「ディレクターに明日はない」その真意とは?
※2017年3月に開催された「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」よりレポート記事をお届けします。
2004年にサーバーエージェントに入社して以来、アメーバ関連のサービスやソーシャルゲームの立ち上げ・運営を手がけてきた大塚氏。
UXコンサルや社員の育成なども行い、2016年からアメーバブログのUXディレクターとして活動している。こうした経験を通じて大塚氏がディレクターとして感じた課題や心がけてきたことを語った。
大塚氏曰く、スケジュール管理やリソース調整といった業務はAIにとって代わられるという。例えば、香港の地下鉄では約一万人の人たちが働いているが、その人たちはAIでスケジュールやリソースを調整されている。こうした事例は他にもあり、日本のWebやITの現場にもいずれこうした流れは押し寄せてくると大塚氏は予測する。
かと言って、(ルーティーン的ではないよりクリエイティブな方向性を指向しても)現状のWebやITディレクターに作家性はそこまで求められているのか疑問だ。例えば、映画やテレビの世界では影響力のある有名なディレクターがいるが、WebやIT業界で見ると他の業界にまで影響を及ぼすようなディレクターは少ない。大塚氏はこの現状に危機感を感じているそうだ。
続けて大塚氏は自身の仕事を振り返り、過去どのようにして困難な状況を乗り越えてきたかを語った。
「ディレクターは濁流の中に放り込まれることがよくあると思うんです。そんなときに僕がやっていることは、基本に立ち戻ること。チームのコミュニケーションルールを決めて、散らばった要求・定義をまとめて、スコープをしっかり決めて、クリティカルパスが何なのかを視覚化して、チームで振り返る。そんな基本的なことをやってきました」
これはあくまでもディレクターとしての基本機能だという。UXディレクターとしてプロジェクトを動かすとき、さらに大切ことがある、と大塚氏は続けた。
「プロセスを設計すること。チームの開発をどのように進めていくかみんなで確認して、課題を発見し、それを定義して開発して届ける。このシンプルなフレームが一番大事。
その上でユーザーリサーチをして、パターンを洗い出して、その情報をもとにユーザーの真意とビジネス要件がマッチするところのゴールを定義します」
そのほかにも、「ユーザーがどんなタイミングでアクションを起こすのか」「このアクションを起こしたら事業に貢献できるポイントは何なのか」ということをピンポイントでチームメンバーたちと共有する。そして、KGI・KPIや事業を決め、シナリオを視覚化する。こうしたプロセスを経て大塚氏はユーザー体験を設計しているそうだ。
具体的に良いユーザー体験とはどのようにつくればいいのだろうか。
取材をしてリアリティを現場に持ち込むことが一番大事だと大塚氏は語る。アクセシビリティの取り組みなどでも、実際に現場でみてみると教科書どおりやったつもりのものが上手く行かないといったといったことがわかる。そういった、リアリティーのある取り組みがよいユーザー体験を創ることにつながっていく。
ただ取材をして良いストーリーだけ考えるだけではサービスはできあがらない。技術やデザイン、働く人たちの個性をどうやって結びつけていくか、それがディレクターとして腕の見せ所になる。複数の軸を理解し深ぼれる「H型人材」になる必要があるという。
「広く浅くのディレクターってなかなか通用しないと思っています。デザインや技術に深く踏み込んでよく理解していって、今でいう「H型人材」を目指す。そうすれば自然と底辺が広がって、キャリアも高く積み上げることができて、また新たなチャンスが生まれるんじゃないかなと思います」
▼「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」で、その他の登壇者が語った内容はコチラ
・ピクシブ最大級のチームビルディング|重松裕三が語るディレクションのコツ
・LINE プラットフォーム事業はこうして生まれる!伊井壮太郎が語る開発ディレクターが持つべき想像力
・新卒だからと甘えていられない。クックパッド 松岡大輔が一人前のディレクターになるためにやったこと
※使用されたスライドはこちら↓
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