2013.05.17
国立博物館公式アプリ《e国宝》開発者・佐藤祐介氏に訊く ― 一人でアプリを開発して見えてきたもの。

国立博物館公式アプリ《e国宝》開発者・佐藤祐介氏に訊く ― 一人でアプリを開発して見えてきたもの。

国立博物館の所蔵品を超高精細な画像としてデータ保存したアプリ《e国宝》を開発したのは、当時WEBプログラミング未経験だった佐藤祐介氏。現在、《Sumally(サマリー)》で活躍している彼は、一体どのようにして、たった一人で人気アプリを開発したのか。

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非エンジニアが《e国宝》アプリをたった一人でデザイン・開発!?

《e国宝》というiOS/Androidアプリケーションをご存じだろうか。国立博物館に所蔵されている、約1000にものぼる国宝や重要文化財の超高精細な画像と解説が楽しめる人気のアプリケーションだ。


《e国宝》


このアプリのデザインと開発をたった一人で成し遂げたのが、現在、《Sumally(サマリー)》で活躍している佐藤祐介さん。

大学を卒業後、東京国立博物館に、アソシエイトフェローとして入り、《e国宝》の開発にひとりで従事した彼は、イチから勉強してiOS/Androidアプリを開発したという。

WEBプログラミング初心者だった彼が、アプリ開発を成し遂げた先に見た自身のエンジニアとしての可能性とは―。

非エンジニアの、初めてのアプリ開発。

― まず、佐藤さんのエンジニアとしてのバックグラウンドから伺いたいと思います。プログラミングを始めたきっかけは何だったんですか?


もともと僕は、映像やデザインを主にやってきたんです。きっかけは、個人の映像制作ツールとしてFlashが流行した2003,4年頃に自分で作品を創ってWEBで公開していたところですかね。そこで映像制作にハマって、大学も日本大学の芸術学部デザイン学科に進学しました。ただFlashを使った映像やデザインを学び、作品を発表することを続けているうちに、だんだんと“画”に動きをつけるよりも、制御する方に関心が移っていったんです。

そして、大学で進路を決めなきゃいけないという時期に、お世話になった教授の方から東京国立博物館のアソシエイトフェローという、非常勤の研究員のような職を紹介して頂いたんです。


― 国立博物館では、どのようなことに携わっていたのですか?


主な業務は、所蔵品のデータベース作成と管理でした。東京国立博物館には11万点以上の所蔵品があるんですよ。その膨大な所蔵品を、きちんと管理していかなければいけないのですが、国宝級の所蔵物や貸出し予定などのデータベースを外注して作ってもらうことはいろいろ問題があって難しいんですね(笑)なので、内製でウェブ管理システムを構築・管理していたんです。

僕は入職してからJavaを習得したのですが、いわゆるプログラミング言語を本格的に覚えたのは、それが最初になります。


― 《e国宝》のアプリ開発に携わることになったきっかけを教えてください。


《e国宝》はもともと国内の国立博物館が所蔵している所蔵物を高解像度で撮影して、WEB上で公開するというものでした。

僕がアプリを開発するきっかけとなったのは、ある時、《e国宝》のプロジェクトを統括する上司から本当に軽い感じで、「WEBだけだともったいないから、e国宝のデータベースを使ってアプリとか作ってみてよ」とiPod touchとObjective-Cの参考書を渡されて(笑)

そこで基本的な業務の傍ら、イチから新しい言語を覚えながらアプリを全工程、一人で開発していきました。

それでプロトタイプを作って報告すると「とりあえず出してみようよ」という話になって(笑)iOS版の《e国宝》は勉強・開発を始めて半年程度の2011年1月にリリース、Android版は今年の2月にリリースしました。

自分のキャリアを変えた《e国宝》アプリのひとり開発。

― 些細なきっかけから、《e国宝》のアプリ化プロジェクトが始まったのですね。開発はどのように進めていったのですか?


なにしろ、Objective-Cもさわったことがなかったので、勉強しながらひとりでひとつひとつ進めていきました。

大学でデザインの勉強をしていたことも手伝って、デザインからUIの設計、アイコンの作成、開発まで本当にすべて自分ひとりでやりきりました。


― 佐藤さんはエンジニアであり、デザイナーでもあるんですね。


確かに、Illustratorでパスを描くのと、コードを記述するのは、僕個人としてはあまり大差ないというか…結局は何かを作るための手段の違いでしかない、という感じです。

今では、デザインもできるエンジニアというところでしょうか。アプリの開発を通じてエンジニアとしての色のほうが強くなった気がします。



― 反響も大きかったのではないですか?

そうですね。予想以上に多くの方に使っていただけて正直びっくりしました。先日も、大型家電量販店に行ったら、展示されているタブレット端末に《e国宝》がインストールされてたりして(笑)

《e国宝》をもともとアプリ化しようとした背景が、高精細な画像と解説で、貴重な国宝をより多くの人に届ける、というものだったので、その目的を自分の力である程度達成できたことがうれしかったですね。


― 前職ではかなり充実したお仕事ができたように感じます。


おっしゃる通りで、通常の業務では得がたい経験と自信になったのは間違いないですね。新しい言語を覚えて、自分の力でアプリという形に変えて《e国宝》という素晴らしいプロジェクトを世に広めることができ、自分がエンジニアであるという意識も芽生えてきました。


― そこでやはりお伺いしたいのが、どうして転職という選択を取られたということなのですが…。


実は僕にとって、転職はいつか考えざるを得ない事柄だったんです。というのも、アソシエイトフェローとして働く任期は最長で5年。ちょうど3年目の後半にさしかかった段階で、周囲から「どう?次のこと考えてる?」といってもらう立場だったので。

自分の中でも、一つアプリ開発をiOS/Androidどちらもやりきったという達成感もありましたし、ソフトウェアエンジニアとして、自分はどのくらいの価値のあるのかということを漠然と考えはじめた時期でもありました。

そこでアプリ開発を通じて得た能力と自信を活かせる場所はないかと昨年末に転職活動を始め、出会ったのが《Sumally》だったんです。

(つづく)
▼《e国宝》開発者佐藤祐介氏へのインタビュー第2弾はこちら
□『e国宝』を生みだした佐藤祐介氏は、なぜ次のステージに《Sumally》を選んだのか?

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編集 = 松尾彰大


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