壮大なビジョンは持たず、ずば抜けた企画力があるわけでもないと語るドウゲンザッカーバーグCEO檜垣雄介さん。いわゆる「普通の人」でも考え抜いて勝負すれば成功できる、そんなモデルケースを目指すという。経験もアイデアもない中、いかに成功を目指すのか?その道筋に迫るべく、檜垣さんにインタビューした。
▼ドウゲンザッカーバーグCEO・檜垣雄介氏の取材レポート第1弾
普通の人が起業する、そのモデルケースをつくる。ドウゲンザッカーバーグ 檜垣雄介氏の挑戦。 から読む
学生時代のインターンを経て、シェアハウスで作ったWEBアプリがヒット。そのまま起業に踏み出したという『ドウゲンザッカーバーグ』。
順調なスタートを切ったかに思えたが、起業のきっかけとなったアプリのPVはすぐに落ち込み、根本から企画を見直さなければならない状況に。
そして、突き抜けたアイデアがないまま、あと3ヶ月で資金が底をつくという危機を迎える。
一体、どのようにして倒産のピンチを乗り切ったのか。そして、そこで手に入れた企画の成功メソッドとは?
ドウゲンザッカーバーグCEOの檜垣さんに当時のことを振り返りつつ、お話を伺った。
― 学生時代にシェアハウスで作ったサービスがヒットし、起業された檜垣さんですが、起業後すぐにマネタイズできたのでしょうか?
いや、それが全然ダメだったんですよね。最初にヒットしたWEBアプリを広げていこうと思ったのですが、すぐPVが稼げなくなり、派生サービスも考えたのですが、どれも流行らずに終わってしまいました。
合計200万円の出資を受けていたのですが、残り3ヶ月くらいで底をついてしまう危機的な状況でしたね。
何とかお金がまわる仕組みを作くろうと、「なんとしても単月100万円の売り上げを確保しよう」と、みんなで話し合って目標を決めました。
― 実際、どのように稼いでいったのでしょうか?
まずはGoogle Playのマーケットを見て、検索されるものの傾向を分析しました。
そのなかで特に検索されていたのは、「芸能人」「壁紙」「YouTube」などのカテゴリー。
そこから自分たちでカンタンに作れそうなもの、流行りそうなアプリを片っ端からリストアップし、そのアプリを10個~20個単位で作り、リリースしていく。
だいたい1年半ほど前のGoogle Playのマーケットはカオスな状況で、こういったやり方でも広告収入だけで、月150万円を売り上げることができたんですよね。
― ものすごく現実的な稼ぎ方ですね。起業前に抱いた理想と現実との間にギャップは感じませんでしたか?
大きなギャップがありましたね。学生の頃からビジネスコンテストに参加していたんですけど、僕らが考えるサービスと世の中のニーズは全然違うんだな、と。
実は学生の頃は、Foursquareっぽいビジョナリーなサービスを考えたりもしていたんです。旅行先にピンとメッセージを残しておき、友だちや知り合いがそのピンを通るとアラートが鳴る。旅先でもつながる、みたいな。 当たり前ですけど、全く流行りませんでしたね。
世間的にも「世界を変えるぞ」的なアプリの企画が流行りましたが、ほとんどのアプリが1円も収益化できずに消えていってしまいました。
その中で「Youtube」「芸能」「画像検索」といった切り口のアプリを作ったら、すぐに売上があがった。この経験からビジネスに対する意識は明らかに変わりました。
― 約1年間で200個のスマートフォンアプリをリリースしたと聞きました。すごい数ですね。
「200個のアプリをリリース」というとすごい数字に見えるかもしれませんが、重視したのは、数ではなくて「収益性」と「スピード」です。
僕らには優れたアイデアや経験、企画力があったわけじゃないので、じっくり時間をかけて企画しても、絶対にヒットするアプリは作れないと思っていました。
だから、3日間で1個作り、もし反応が良かったら、いくつかのパターンに派生させて、10個~20個の単位でリリースしていったのです。
― だから、結果としてアプリのリリース数が増えたというわけですね。いま、特に狙い目としているカテゴリーはありますか?
たとえば『すごい時間割』など生活で使われるツール系のアプリは、アンインストールされにくいので狙い目ですね。
1年くらい前まで利益を出しやすかった「芸能」「壁紙」といったカテゴリーは、インストール数は急速に伸びるのですが、アンインストール率も異常に高く、中長期的に勝負するには厳しいカテゴリーだと思いますね。
― インストール数を稼ぐより、アンインストールされにくくする。ここがポイントになるのでしょうか?
おっしゃる通りで、理想的な状態は、少しずつインストール数が増え、可能な限りアンインストールされないことです。
インストール数とアンインストール数がイコールに近づくと、最終的な総ダウンロード数として均衡がとれていきます。
できるだけ総ダウンロード数の均衡点を高くできれば、先々の広告収入が見えてくるので、腰を据えて運用できるんですよね。そうすると精神的にもラクになってきます。
― たくさんアプリを作ってきた檜垣さんが思う、「売れるアプリ」を企画するために大事なことがあれば教えてください。
誰かに言われて作るのではなく、自分でインプットし、考えて作ることだと思います。
結局、どんなにすごい人の本やブログを読んだところで、自分の勝ちパターンは見つけられないし、教科書にならないんですよね。
とにかくトライ&エラーをたくさん経験し、試行錯誤しながら自分で見つけていく、「自分で教科書をつくる」という感覚が大事です。こういった背景もあって、僕たちは受託での開発は一切やっていなくて、自分たちで企画して作ることにこだわっています。
僕自身、数をこなしてきたからこそ見えてきたメソッドがあって、自分だけの「企画の教科書」ができつつあります。
― 具体的には、どのような方法でアプリを企画しているのでしょう?
3つの手法があって、
「海外からアイデアを持ってくる」「自分の国で強いところに絞る」「とにかく自分がやりたいことを企画する」
というもの。
特に今はアメリカ、シンガポール、ドイツで流行りつつあるサービスを探してきて、日本に合うように企画し、モックを作ってみることが多いです。
その案に対して投資家の方にアドバイスをいただき、ブラッシュアップしていく手法が多いですね。
芸人の島田紳助さんが若手だった頃のエピソードなんですが、自分がおもしろいと思う芸人のライブをカセットに録音し、すべて書き出し、何秒ごとにどのくらい間があるか?ひたすら分析したそうです。まずは「自分だけの教科書」を作った。
WEBの世界も同じで、誰でも参考にできる教科書はありません。教科書がなければ、勉強もできないんです。そこがもどかしい。だから自分で教科書を作るしかないと思います。
(つづく)
▼ドウゲンザッカーバーグCEO・檜垣雄介氏の取材レポート第3弾はこちら
□幸せな家庭を作るより、起業で成功したい。ドウゲンザッカーバーグ檜垣雄介氏に聞く「働くこと」の意味。
※一部記事を訂正させていただきました/CAREER HACK編集部(2016年12月2日)
文 = 白石勝也
編集 = CAREER HACK
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