あるデザイナーが書いた『UIデザイナー不要説』というブログをきっかけに開催された、UIデザインに関わるすべての人の為のコミュニティ UICrunch #2。テーマは、そのものズバリ「UIデザイナー不要説について考える」。第一線で活躍する登壇者たちが考えるUIデザイナーの未来とは――。
2014年10月26日。センセーショナルなタイトルのブログが、ネットをにぎわせた。
書いたのは一人のUIデザイナー。UICrunch #1を受け、執筆したものでした。このブログにレスポンスするカタチで、TORETA COO 吉田さんとBASE CTOの[えふしん]こと藤川さんも記事を執筆。UIデザイナーの役割、必要性、未来などさまざまな考えが展開されました。
一連の流れをきっかけに、UICrunch #2は急遽テーマを「UIデザイナー不要説について」に変更。発端となったブログを執筆した川上さん、TORETAの吉田さん、BASEの藤川さん、さらにnanapiのCTO 上谷さんが招かれ、それぞれの視点からUIデザイナー不要説について語られました。
今回CAREER HACKでは、UICrunch #2のなかでも後半に行なわれたパネルディスカッションに注目。やり取りから感じられた、“UIデザイナーバブル”到来の予兆とは――。
パネルディスカッションのなかでも、特にモデレーターであるGoodpatch CEOの土屋氏、DeNA 坪田氏のやり取りにフォーカス。UIデザイナーの役割、価値、そして未来とは?DeNAの事例を交えて語られた部分を抜粋してご紹介します。
土屋:
UIデザイナーがプロジェクトのなかで、どれくらいの決定権が与えられて、どのような役割を担っているのか。ココが重要かなって思っていて。DeNAはどうですか?
坪田:
そうですね。むしろ最近のアプリ開発って、サービスの発明をしてUIをつくっていくのが仕事になると思っています。役割としては最終的な意思決定はプロデューサーが持つべきなんですけど、ハンドリングやコントロールをする決定権がないと開発できないんですよね。責任持って、サービスをつくるっていう人がUIデザイナーの役割を担うべきだと思うんです。
また、UIデザイナーが最終的な意思決定者になるケースがあってもいいと思ってますね。僕自身、プロダクトオーナーとしてUIを開発していたこともあって、そういうケースがあってもいいかな、と。むしろ僕は自分に意思決定権がないとサービスをつくりたくないので(笑)。そのほうが周りを巻き込みながらいいモノをつくれると思っています。
土屋:
ちょっと話題変わるんですけど、今UIデザイナー募集としてどんな人が来てもらいたいですか?
坪田:
プロトタイピングして、スクラップ&ビルドを繰り返してサービスをつくっていくので、「グラフィック勉強してきました」、「デッサン力があります」ってよりも、つくったモノを自己否定できて、何がユーザーに刺さるのかっていう思考を回せる人ですよね。かつ、今のアプリケーションって、2Dじゃなくてレイヤーとかアニメーションとか、トランジションすべて含めて機能としてデザインしていくので、すべてを頭の中でシミュレーションしてUI設計できる人。で、結果ユーザーが使う機能を選別できて、ディレクションできる人を募集しています…(笑)。
土屋:
…いないっす!ハードルめちゃ高いですね(笑)。
坪田:
(笑)。役割分担なので、一つや二つ欠けててもいいと思うんですよね。要は、ちゃんと回すって意思をもって、足りないところをコミュニケーションで補って、常にユーザーを意識しながら頑張れる人です。10年、20年超勉強してきましたっていう人よりも、楽しみながらプロトタイピングを回していける人であれば、若くてもやっていけると思うし。UIデザイナーって、修行しながらつくられていく職種だと思うので。マインドが大事かなって思います。…ゴールとしては、さっき話した人物像ですかね(笑)。
さっき、えふしんさんとも話したんですけど、UIデザイナーってスタートアップでいうCTO的な役割を担う人だと思うんですよね。スタートアップのCTOって名前は魅力的ですけど、本当何でもする人だと思うんですよね。品質管理もするし、内部の開発プロセスも整えるし、何でもやるスーパーマン的役割に近いのかなって思っています。きちんとそのあたりをイメージできる人を求めていますかね。
土屋:
UIデザイナーの給料を上げるためにはどうすればいいでしょうね?
坪田:
僕、そこについてはちゃんと答えられるんですけど、今までデザインの受託って納品物がグラフィックだったんですよ。プロセスを売っていなくて。グラフィックだと、人月単価でそこそこ出せるし、アイミツをとると他の会社が安く出してきたら平均値をとられちゃうじゃないですか。だから、受託会社はプロセスやコンサルの費用とグラフィックの費用を分けて単価を引き上げていくべきかなと思っていて。
というのも、ウチはソーシャルゲームが一気に盛り上がったのときにアーティストとかイラストレーターとかの給与水準を明確に上げたかなと思っています。カードゲームとか流行ったときに、取り合いになってたぶん数百万くらい業界で高めたかなと思っているんですね。だから、自分たちで事業をつくって業界を盛り上げていって単価を上げてきたってことをUIでも同じことやらなきゃいけないかなと。で、僕はもっと給料もらったほうがいいし、強気に言っていってもいいと思っています。(オーディエンスを見ながら)もっと引き上げてもらったほうが良いですよ!事業会社できちんとサービスをつくっていく立場でやるのなら、デザイナーではなくプロダクトをつくる人の評価で上げていくべきだと。ウチはそういう考えです。
土屋:
ソーシャルゲームが流行った3~4年でエンジニアの給与水準も上がりましたよね。それは「エンジニアがいない!でも集めなきゃいけない!」っていう状況があって引き上がったからで。同じことが起きようとしているので、今こそ!って感じですかね。
坪田:
そうですね。あと1年くらいしたらそういう流れになると思います。あと、海外のデザイナーって自分のプレゼンがすごくウマいんですよね。自分はこれだけ高い価値を持っていて、ポートフォリオもあるから、ちゃんと高く評価してくれないと仕事しないというスタンスなので、そこは日本のデザイナーもやるべきだと思います。あと、本当はUIってサービスの開発なんですよね。だから給料は高くすべきだと思うし、ウチは少なくとも一定の売上を上げ続けているので、そこをリードする立場でありたいな、と。
土屋:
僕も思います。ウチは、絶対にこの1年以内にデザイナーたちの給料をソーシャルゲームの会社より高くするっていうのを目標に掲げてやっているって感じですね。
坪田:
海外のデザイン会社と仕事したことがある人はわかると思うんですけど、海外のデザイナーって本当に高いですよ。グラフィックの納品物より、プレゼンを含めたサービスのUX開発やコンサルみたいなところで非常に高い金額を持っていきます。つまり、そこで頼られるような仕事をしていくと、業界が変わっていくと思うんですよね。そういう時代が来ているので僕らみたいな事業会社と受託で単価を上げていくことが、日本の製品を良くすることかな、と思います。
土屋:
schooからかなり質問がきていますね。「稼げるデザイナーになるためにはどうすればいいですか?」。…何かありますか?
坪田:
自分でUIデザインをオリジナルでして、なぜこのUIにしたのかというのを毎月BehanceとかDribbbleとかに1個ずつ上げていけば1年以内に200万くらい給料上げられるオファーは来ると思います。エンジニアもそうだし、今は若干人材不足で取り合いになっているところがあるので、自分で発信してプレゼンできて目立つ人って、絶対企業からオファー来るんです。それだけのことがきちんとできるんであれば、それだけの金額をもらっていいので。
もし給料に悩んでいる人であれば、だまされたと思って半年続けてみてください。良かったら、僕がスカウトするんで(笑)。絶対に大事です。海外のデザイナーでBehanseでオファー来まくってる人は、単価どんどん上がっているんです。結果フリーになったり、デザインスタジオに所属したり、って選択肢はさまざまですが、自分の名前を売って、きちんと高くしていくという時代が来ると思うので。徹底すれば、100万~200万くらい上げられるようにはなると思います。
土屋:
よく日本だと、自分のつくったデザインを公開できないってことありますよね。これが結構問題かなと思っていて。でも、坪田さんは会社の仕事でも公開しようとしているんですよね?
坪田:
会社の宣伝みたいになっちゃうんですけど、そういうのって超イケてないなって思っていて。自分がつくったものって言いたいじゃないですか。言えない環境って不健全だし、業界的にどんどん変えていったほうがいいと思うんですよ。ウチは仕事でつくったものをBehanseとかDribbbleとかに上げて、「著作人格権」としてもっと発信してっていいよという文化に変えました。企業努力すれば、文化って変えられるんですよね。エンジニアもそうなんですけど、今後単価が高くなっていったときに人材が会社にいるためには権利を守ってくれる会社が生き残るし、いいモノをつくるのかなと思っています。海外のデザイナーとかだと、著作人格権とかを発信しないとほぼ仕事をしてもらえない文化になっていますしね。
イベント全体から感じられたのは、UIデザイナーが必要とされる時代はすぐそこまで来ているということ。そのビッグウェイブに乗るためのヒントが、土屋さんと坪田さんのやり取りにあったのではないでしょうか。またイベント全体の様子は、schooにて無料で視聴できるので、「ゲストの講演を聞きたい」、「UICrunchの雰囲気を知りたい」という方はぜひコチラをチェックしてみてください!
[取材・文] 田中嘉人[編集] 松尾彰大
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