2012.11.12
時代は“メタデザイン”を求めている ― WOW 鹿野護のUI・デザイン論。[3]

時代は“メタデザイン”を求めている ― WOW 鹿野護のUI・デザイン論。[3]

「偶然性」「一回性」「動的平衡」など、UI/UXデザインを独自の観点で論じる鹿野氏。最後にそうした論理に基づいた具体的なデザインの方法論に迫るべく、「世界観を構築するためのデザイン制作メソッド」について伺った。この先、「デザインを創るためのデザイン=メタデザイン」の視点が重要になってくるという。

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デザインは“世界観”を築くためにある ― WOW 鹿野護のUI・デザイン論。[1]から読む

“記憶に残るデザイン”の作り方 ― WOW 鹿野護のUI・デザイン論。[2]から読む

もしWOWが「電子書籍」や「ECサイト」をつくったら。

― 最後にぜひお伺いしたいのですが、もし鹿野さんに「電子書籍」や「ECサイト」をお願いしたいというオファーがきたら、どのようなアプローチを取られるのでしょうか。

深く考えたことがまだ無いので、難しい話ですが。たとえば「電子書籍」なら過去読んだ本に貼った付箋というか、ハイライトみたいなものと偶然に出会える仕組みが欲しいですね。昔に買った雑誌を読み返して、当時印象に残ったところに「あぁコレコレ」みたいな感覚。

そんな体験をまだしたことがないので、ぜひそんな仕組みが欲しいですね。逆に、同じ本について皆で議論しあうとか、コミュニティのプラットフォームとして電子書籍を扱うのはあまり興味がりません。書籍というメディアの良さは自分と向き合うことだと考えているので。

― たしかに、「紙の本の置き換え」、ただ「持ち運びが便利になっただけ」、というだけではない“魅力”がありますね。

あと、「ECサイト」のような仕事を手がける機会があれば、インフォグラフィックス的な要素を軸としたデザインをしてみたら面白いのではないかと思います。もっとダイナミックなレイアウトで、グラフィックデザインがそのまま情報のデザインになるような…。「地下鉄の路線図」じゃないですけど、ピクトグラムで終わらず、もっと情報全体の構造を指し示すようなデザインをやってみたいと思いますね。

そしてレコメンド機能も、今は「この商品を買った人は、これも買っています」という情報は出てきますが、「これは絶対買いません。確率ゼロです」というものが出てきても面白いと思います。現在のサイトの多くは「他人のマネをしませんか」という提案に終始していますよね。そうじゃなくて、意外性や新たな発見も提供できると良いなと思います。

最初に、「言葉」と「ビジュアル」で世界観を具体化する。

― とても興味深いお話、ありがとうございました。一人のユーザーとしても、今のWEBのデザインって「いかに分類して整理して見せるか」というところで止まっている感じはしていたので、非常に納得感がありました。

WOWのUIの具体的事例の一つとして「Smart TV Box」(テレビチューナーを内蔵しAndroidを採用したスマートテレビのセットトップボックス)というプロダクトがあります。WOWはホームアプリ全体のUIを担当し、テレビ画面上に映し出されるホーム画面から4方向に向かって情報が伸びていくという“空間の設計”を意識してデザインしました。

こうしたクライアントワークにおいても、私たちの場合「世界観のデザイン」から始めます。どういう世界でユーザーとテレビを結びつけるかという定義付けをしてから、実際にユーザーの目に触れる部分に落としていく感じです。

― そういった際は、まずは「言葉」で定義するんですか?

最初は、言葉です。定義した言葉とミニマムなビジュアルを提案し、大きな方向性が定まった時点で、ある程度具体的なビジュアル、時にはムービーや音楽までも制作してしまうことがあります。そうすることによって、最終的につくりだしたい世界観を、プロジェクトの初期段階で、関係者全員が共有することが出来る。

そうやって具体的なインターフェースに落としていく作業に進んでいきます。「Smart TV Box」の時だと、「コンテンツが集まって浮遊している球体(グローブ)」を動きも含めた形でビジュアライズして、世界観を共有しました。

WOWが見据える、ビジュアルデザインの次なる地平。

― 本当に「世界観」から、クリエイトしていくんですね。

そうですね。目的に応じた使い分けこそあると思いますが、やはり「世界観」があって、その上で表面のGUIまで一貫させることを大切にしています。もしかするとWebデザインのプロセスとは異なる進め方になるのかもしれませんが、我々としてはこうした思想のもとで進めることが多いです。

なんだかインスタレーションや、細胞膜の話など、WEBにおける「UI」という面で有益な話ができたかは心配なのですが…(笑)。独自な視点を持つことで、達成出来る目標もあるのではないかと信じています。

― いいえ。多くの示唆に富んだお話を伺えました。これで本当に最後にしたいと思うのですが、ズバリ「これから先に求められるUI・求められるデザイン」とは、どのようなものになるのでしょうか。

デザインを創るためのデザイン、いわば「メタデザイン」と呼べるものだと思います。すでに世の中では、情報機器が生活に欠かせない存在になり、さらにクラウドサービスのような人生に長期的に関わり続けるシステムが生まれています。

そのなかで求められるのは“大量生産をベースにしたデザインから、より使う人にフィットしたデザイン”であることは間違いないでしょう。それは、グローバルに汎用的な技術と、ローカルでオーダーメイドが可能な技術の組合せから、生成されるはずです。

WOWでは、そんな新しいメディアを載せる“美しい器”のようなデザイン、その“接点の美”としてのユーザーインターフェースを手がけていきたいと思っています。そのためには、我々自身も飛躍した思想を持って、新しい取り組みに挑まねばと考えていますし、今まさにそうしたプロジェクトを始めようとしているところです。

― そのプロジェクトも非常に興味深いですね…。形になった際は、ぜひまたお話を聞かせてください。今日は本当にありがとうございました!




(おわり)


編集 = CAREER HACK


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