2017.04.28
開発スピードを落とさない! ヤフー 横田結が語る『myThings』ディレクションの裏側

開発スピードを落とさない! ヤフー 横田結が語る『myThings』ディレクションの裏側

ヤフーでIoTプラットフォーム「myThings」のディレクションを担う横田結氏。ステークホルダーが多いサービス企画で、ディレクターが注力すべきこととは?スピード感を落とさずに企画・開発を進める方法が語られた。

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染み出し型サービス ディレクション|ヤフー 横田結

※2017年3月に開催された「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」よりレポート記事をお届けします。


まず、開発ディレクションの話に入る前、横田氏はIoTにおけるサービス開発の複雑さを「染み出し型」と表現した。一例として「おばあちゃんにつかってもらうIoTサービス」の話をしてくれた。


スライド資料1


「たとえば、おばあちゃんがロボットに向かって「お米買って」と話しかけて、購入ができるサービスを『myThings』で作ったとします。ただ、これってすごく考えることが多いですよね。

まずインターフェイスが現在普及していないロボットだったら?インターネットに慣れていないおばあちゃんは使える?お米は夕方にすでに買っていたら?「話しかけて」というトリガーって今までなくない?普段現金使ってない?…などなど簡単に利用されるとは考えにくいですよね」


こういった実現への難易度が高いシーンを、まずは一つひとつ紐解いていくのも彼女の役割だ。

IoTはインターネット外への関わりが大きいという意味で、企画工程も含めて「染み出し型サービス」である、というわけだ。そして『myThings』は選べるインターフェース、タッチポイント、扱うコンテンツ、出力方法なども多数。携わる人たちも非常に多くなる。


「『myThings』の体験はステークホルダーやインターフェイスが多様で、扱う情報をどう出し入れするか、とても複雑です」


この複雑になりがちなプロジェクトをどう進めるか。まず横田氏が行なったのは「各ステークホルダーにとって良い体験をつくり、伝える」と、ミッションを明確にした。そして、企画工程ではさまざまな課題に向き合ってきた。

「立体的に描く」「ブラックボックスを置く」

具体的に、どう企画を推し進めていったのか、見ていこう。

まず、企画をゴールに導くために「立体的に描く」「ブラックボックスを置く」という2つの考え方をマインドセットとして取り入れたそうだ。

1つ目の「立体的に描く」ということについて。IoTや様々なインターフェース・ステークホルダーが登場すると、脳内で立体的に描かないと収まらないという。


スライド資料2

時と場合よってそのポイントすら変わるというが、7つの例を用いて解説してくれた。


「時間」… タッチポイントの前後に何が起きているのか。「滞在時間3分間」という単純な話ではない。サービスの能動的な利用時間外を想像する。

「視野」… 輪郭はどこにあるのか。ユーザーとサービスの外側・内側を区別する。

「視点」…ユーザーとインターフェイスが向き合っているとき、ピント外の背後で起こっていることにも気を配る。

「視座」…法務、サービス提供者など、別の立場に立つ。

「軌跡」… 単純な往復での情報の受け渡しではない。例えば人が急ぎ足で通り過ぎる横の画面のコンテンツが長尺動画じゃだめだよね、と。時間経過と動きに無理がないかを考える。

「余白」… 100%のコンテンツを詰め込むことが、ユーザーの満足度100%を叶えるとは限らない。ユーザーのキャパシティを超えていないかどうかを考える。

「水面下」… 事業者の業種、扱う商品によって開発も決裁もスピードの感覚が全然違う。同じ世界観をつくるため、敬意をもって並走する。


このように立体的に考えすぎると企画スピードが落ちてしまう。そこで2つ目にマインドセットとしてあえて「ブラックボックスを置く」のだという。


スライド資料3


誤解のないよう「ブラックボックス化」を補足すると、「誰にどの情報が必要なのか」を事前に定義し、伝えるべき相手、伝えるべき情報を明確にするということだ。

それぞれが自身の役割を担っているなか、「必要のない情報」のインプットは、物事を複雑化させてしまう。ここはディレクターの重要な判断であり、スキルだといえる。


「可逆性のないポイントや体験の出口などの“お客さんに対してこういうクオリティで届けたい”というゴールだけを最初に決めて、それまでの過程や裏側の部分は、あえてブラックボックスにします。そうすることで、それぞれが余計なノイズに悩まされることが少なくなり、開発のスピードは維持できますし、コストを下げることにもつながっていきます」


▼「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」で、その他の登壇者が語った内容はコチラ
・ピクシブ最大級のチームビルディング|重松裕三が語るディレクションのコツ
・LINE プラットフォーム事業はこうして生まれる!伊井壮太郎が語る開発ディレクターが持つべき想像力
・新卒だからと甘えていられない。クックパッド 松岡大輔が一人前のディレクターになるためにやったこと
・深く語れるディレクターこそ活躍できる! サイバーエージェント UXディレクター 大塚敏章

使用されたスライドはこちら↓


文 = 田尻亨太
編集 = 大塚康平


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